【音楽】倍音とは何か【整数次倍音、非整数次倍音、波の合成】

音楽
スポンサーリンク

はじめに

今回は倍音について紹介します。
音の基本的な知識がある事を前提に進めます(高さ、波形など)

基礎知識についてはこちらをご覧ください。

倍音とは

倍音とは特定の高さの音を鳴らした時に発生する別の高さ(周波数)の音です。
これは波形の形などの違いで発生します。

同じC4(261.626Hz)を鳴らしても…
・Sin波の場合は、1つの音だけが鳴る
・それ以外の波の場合は、別の周波数の音がセットで鳴る

この添加物的な音が倍音。
この倍音がなぜ生じるかなどを見ていきます。

波形と周波数

倍音を理解するために「波形と周波数」をおさらいします。

波形とは音の波の形です。

このような、周期性を持った波形は複数あります。(楽音)

また、周期性を持たない波形もあります(噪音)

周波数とは1つの波の幅です。
波の幅はHzで表記し、図ではこのように表されます。

Sin波でC4の音を鳴らします。
すると、C4の周波数の音が出ます。

Sin波でC4よりも高いA4の音を鳴らします。
すると、周期性の間隔は狭くなります。
そしてHzの数字が増えます。

以上が波形と周波数の基本です。

そしたら、波形をSin波の音以外に変えます。
すると… C4の音しか鳴らしてませんが謎の周波数帯(倍音)が出てきます。

次はこの倍音がなぜ出るかについて見ていきます。

波の合成

倍音を理解するために、波の合成を見ます。
普通に高校物理の波合成です。

2つ以上の波はぶつかると変化量が加算されます。

ここに、複数の間隔と強さが違う波を用意します。

この複数の間隔と強さが違う波を合成していきます。
すると… 波形が変わります。

立体的に見るとこのような形です。

1つの波に特定の周波数と強さが違う波を合成する。
すると波形が変わる。

逆に言うと…
Sin波以外の波形を作るには、別の周波数と強さを持った波が必要
これが、増えた謎の周波数の正体です。

C4のノコギリ派を鳴らした場合、
ノコギリ波の波形を作るために、C5やG5の音も一緒になります。

追加される音について

追加される音は下記の2つ。
・整数次倍音= Sin波以外の波形を作るモノ。
・非整数次倍音= 楽器などの特性上、鳴るノイズのような音。

この2つについて、詳しく見ていきます。

整数次倍音

波形を変える音には一定のルールがあります。
そのルールは「元の周波数×整数」です。

※厳密に言うともっと細かなルールがあります。
(微妙な少数値の影響でcentsなどの処理が必要)

無限にありますが、だいたい紹介されるのは第1~16倍音までです。
※細かな数字を計算すると誤差が出ます。
 だいたいのイメージとして掴んでください。

12音階それぞれの倍音はこのように1つ音階をズラすだけ。

この1~16次倍音を下記の方法で鳴らすと有名な波形ができます。
・ノコギリ波はすべての整数次倍音を鳴らす
・矩形と三角波は奇数だけの整数次倍音を鳴らす
・Sinは基音だけ鳴らす(倍音無し)

奇数だけの整数次倍音とは第1、3、5,7,9,11,13、15…倍音です。
これを奇数倍音と呼びます。

あと矩形と三角波の形の違いは、奇数倍音の音量の違いにあります。
ほかにも、あらゆる波形はこの整数次倍音のなり方や強弱などの違いで表現できます。

コラム1:基本コードの3和音が調和する理由

整数次倍音は、和音(コード)の音楽理論に大きな影響を与えてます。
重要なので紹介します。

第1~6倍音の構成音を見ます。
すると、基本的な3和音の音が鳴ってる事が分かります。
(Cの場合EとG)

このあたりの周波数は相性が良さそうです。
これが、基本コードの3和音が調和する理由と考えられます。

コラム2:錯聴(ミッシング・ファンダメンタル)

基音を無くしてそれ以外の倍音を鳴らします。
すると…基音が無くても、元の音を認識してしまいます。

この現象を錯聴と呼びます。
(ミッシング・ファンダメンタル)

コラム3:分散和音

個人的にずっと謎だったのが分散和音が成立する理由。
これは”錯聴”があるからで私は腑に落ちました。

基音が鳴って無くても、倍音の音を鳴らせば元の音を感じさせることができる。
これが分散和音が成立する理由と考えられます。

3と5の整数次倍音は普通のコードからズレてますが…

非整数次倍音

周期性を持たない波形もあります。
これを、非整数次倍音と言います。

これも倍音として音に添加できます。

あらゆる自然な楽器の音について

自然な楽器の音は「整数次倍音」と「非整数次倍音」の2つが混ざってます。

ピアノの場合、ピアノ波形を作る整数次倍音。
それに鍵盤や弦を叩くノイズ的な非整数次倍音が混ざります。

人は同じC1の音を鳴らしても、倍音の違いから楽器や音色の違いを感じ取ります。
(ピアノ、フルート、ギター、声楽など)

非整数次倍音が多くなると、人は音程を聞き取りにくくなります。
(歪みを入れたギター音や、ドラムのタムなど)

EQのロー切り、ハイ切りについて

EQの考え方で、人に聞こえない周波数はカットしようという考え方があります。
が、倍音的に考えると必ずしも正解ではありません。

聞き取れないとされる、20Hz以下の音でも人は感じると言われてます。
(声楽などの場合、喉の鳴りなどが20Hz以下に入る=消さない方が自然)

聞き取れないとされる、20kHz以上の音も、倍音を切る事で波形の形を変える可能性があります。
(基音が高い場合、整数次倍音は20kHzを超える事がある )

このような倍音的な観点から、ロー切り、ハイ切りはおすすめされてないようです。
やるとしても、緩やかなカーブで切るのが理想。
でも、別の本や記事では切った方が良いと書かれてる。

…正直、宗教の違い。
切ると教える情報はあるし、切らないと教える情報もあります。

宗派にもよりますが… EQは特定の楽器を合わせた時に生まれたひずみを減らす用途。
何も考えずローとハイ切りは入れない方が無難。
入れるとしても意味や役割を考えて入れます。

おまけ:基音が高い場合

ノコギリ波で試しました。
基音を高くすると20kHzを超え始めました。
(これは聞き取れないとされている周波数です)

さらに高くすると… 20kHz以上の倍音が無くなりました。
代わりに、低い周波数に倍音が出てきました。

20kHzを超えると、1周回って低い周波数に倍音が出てくるようです。
一定の段階まで高くすると…複雑すぎて理解が難しい形になります。

ごめんなさい、正直、謎です。

特定の波の当て方でこうなるようですが…
このあたりの理解は、高等数学の領域になってくると思われます。

まとめ

今回は倍音について解説しました。

・倍音=特定の高さの音を鳴らした時に発生する別の高さ(周波数)の音
・Sin波以外の全ての音で発生する
・整数次倍音と非整数次倍音の2種類がある
・整数次倍音は主に波形を作るための周波数
・整数次倍音は「元の音×整数1~16…」の周波数に発生
・整数次倍音は、元の音が高くなると低い位置に発生する事もある
・非整数次倍音はノイズや打撃音
・倍音があるので、聞こえない周波数でもEQのロー切り、ハイ切りを脳死で入れない方が良い
・整数次倍音の第1~6倍音の構成音は、基本コードの3和音と同じ

他にも、メロディ、コード、リズムという3つの主要な音楽構成要素について解説してます。

ぜひこちらもご覧ください。

コメント

タイトルとURLをコピーしました