はじめに
今回は3DCG作家向けに指輪制作に関する「彫金の技術」をまとめます。
VRChat向け3Dモデルでの指輪制作方法はこちらをご覧ください。
金属加工の方式
主な指輪制作に関する金属加工の方式は下記の2つ。
・板金加工+ロウつけ
・ロストワックスや銀粘土
板金加工+ロウつけ
板金加工は主に「板状」と「棒状」の金属の2つで形を作ります。


要するに板とワイヤーが基本形です。
板は切ったりすれば丸やもっと自由な形に加工できます。
ローラーにかけると伸ばせます。

あとはタガネという工具を使用し上から溝をいれたり、模様をつけたり、削ったりできます。

この凹凸は3DCGだと「ノーマルマップ」の描画で再現できそうです。
ワイヤーは線引き板というのを使うと加工できます。
これで半円や四角形などの形を作れます。

↓こんな感じのやつに削って先を尖らせた線を入れて引っ張って使います。

↓使い方(マニア向け)

金属を柔らかくするため定期的にバーナーで焼いてます。
(「焼きなまし」という工程)
あとは板を丸めたりすれば指輪です。

ですが、丸めたところに切断面ができますね。

この切断面は純度を下げた金属を使って溶接します。

↓こんな感じに置いて焼いて溶接。

それを削って磨いて綺麗にする形です。

あとは小さな金属片は焼くと「丸く」なります。(通称:シャカ玉)

これらの技法を組み合わせると、こんな感じの指輪などが作れます。(3DCG)

↓それを3DCGで再現したモノ。

以上が板金加工+ロウつけの解説です。
ロストワックスや銀粘土
ロストワックスや銀粘土造形は3DCGで言うとスカルプトです。
まず「型取り」用の形状をワックス(ろうそくのようなもの)で作ります。

それを型取りして銀にする加工方法です。

強度は板金に劣りますが…
造形の自由度はロストワックスの方が高いです。

3DCGで解説するならこういう指輪向き。

以上がロストワックスの解説です。
石留めの方式
次は宝石の留め方を紹介します。
おもに3つの考え方があります。
・爪留め
・フクリン留め
・彫り留め
こちらを見ていきます。
爪止め
爪止めはまず台座を用意します。

四角形の板を丸めてヤスリで削って成型。

この台座に石を入れます。

次に四角形のワイヤーで爪というパーツを作り溶接します。

これを複数個所設置し、石を留めます。


リアル彫金でやるならワイヤーはまっすぐな状態で溶接。
そのごハンマーなどで叩いて曲げます。
以上が爪留めです。
3DCGで再現したい方はこちらもご覧ください。
フクリン留め
石と台座を用意。

石が少し隠れるぐらい横の壁を高くしておきます。

あとはこの高い部分をたたいて曲げる。

以上がフクリン留めです。
彫り留め・玉留め(地金を削る)
これは難しいです。
石の周りをタガネで削ってその削りカスを使って留める方法。

↓これはたぶん、実際の動画を見た方が早いです。

「The職人の技」みたいなことをやってますね。
3DCGならこれぐらいの再現度が限界と思います。

詳しい作り方はこちらで解説。
基本的には「爪、覆輪、地金を削る」この3つのパターンに落ち着きます。
これを元に作られた細かなバリエーションはこちらのサイトが細かく解説してます。

金属に模様を入れる技法
金属には模様を入れれます。
主な入れ方は下記の3つ。
・金属を2枚重ねて削る
・木目金
・寄金細工
金属を2枚重ねて掘る
金属を2枚重ねて溶接します。

そして上だけヤスリで削ります。

すると2色になります。

実際には削ってるのでV字状の断面になります。

内側も少し削られます。

これを3DCGで再現するならV字状のスクリュー形状を複数用意。

ブーリアン演算で削って再現する形になります。

ただし頂点法線や面の構造が汚くなりすぎるので注意。

これをすごい頑張って人間が調整する必要があります。

頑張って頂点を1つ1つ操作+シャープ付けで頂点法線も操作。

みたいなことを繰り返して内側だけマテリアルをかえれば再現できます。

↓結構頑張りました。

作った指輪はこちらで販売してます。

もう一つは「Matcap1と2」+「ノーマルマップとマスク」ですが…

ピクセルベースの処理なのでズームで見ると荒れたりギザギザします。

以上が2枚の金属を重ねるの解説です。
木目金
金属板を4層重ねます。
そして高さを変えて削りまくります。

それをローラーで伸ばします。

これは3つ以上のMatCap+マスクで再現できます。

こんな感じの表現ができます。


ただ再現度は低め。
木目の描画を複数のマスクテクスチャで整合性を保ちながら作るのが難しい。
寄金細工(幾何学模様)
箱根の伝統工芸に「寄金細工」というモノがあります。
これは色が違う三角形などのパーツを用意。

これを複数配置して模様を作る技法です。

これを金属で再現できるらしいです。(詳しいやり方は不明)
3DCGで再現するならベクター系のツールで模様を描画。

Affinityのシンボル機能を使うと作れます。
あとは色を調整してマスクにすれば再現できます。

ちなみにこの指輪はこちらで販売してます。

銀細工に関する仕上げ技法
次は金属加工の中でも特に「銀」の仕上げに関することを紹介します。
ロジウムメッキ
銀細工の仕上げに使う処理です。
全体が金属質っぽくなります。
これは全体のマテリアル調整をするだけで行えます。

いぶし銀(硫化)
銀は何もしないと硫化銀に近づいて黒っぽくなっていきます。
そしてあえて硫化させて「黒」っぽくする方法もあります。

これは凹みがある形に対して有効。
まず全体を黒くします。

そして表面だけ磨くと…
溝がある所だけ黒いのを残せます。

これはノーマルマップ+マットキャップにマスクで再現できます。

↓こんな感じの表現ができます。

AOベイクも使えるとリアリティが上がりますが…
UVを重ねると意図しない形の黒い部分が生成されたりするので…
おすすめはしません。

まとめ
今回は3DCG作家向けに指輪制作に関する彫金技術の解説しました。
・主な金属加工は「板金」と「ロストワックス」
・板金は板とワイヤーとタガネを使って形を作る
・ロストワックスはロウソクのような素材を使って型取りする
・宝石の止め方は「爪、フクリン、彫り」の3つが主な方法
・銀はいぶし銀にすると全体に黒くしたり、凹みを黒くできたりする
また他にも3DCGなどについて解説してます。
ぜひ、こちらもご覧ください。










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